「被告に対する慰謝料」に関する離婚事例・判例
「被告に対する慰謝料」に関する事例:「妻の家出癖、夫の暴言癖で離婚…」
「被告に対する慰謝料」に関する事例:「夫婦の性格の不一致による婚姻関係の破綻により、離婚請求を認めた判例」
キーポイント | 離婚が認められるためには、結婚生活をこれ以上継続することができない重大な理由が当事者の間になければなりません。 婚姻関係を継続し難い重大な理由がこの夫婦にはあるのかがポイントとなります。 |
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事例要約 | この裁判を起こしたのは妻(原告)で、裁判を起こされたのは夫(被告)です。 1 結婚 夫と妻は平成2年6月29日に結婚しました。 夫婦は、夫が前の妻との間にもうけた子供と共に3人で生活をしていました。 2 夫の病気 夫は妻との結婚前から自膣神経失調症の診断を受けていました。 結婚後の平成6年11月ころ、正式にパニック障害の診断を受けました。 仕事で自動車を運転することは何とかできるものの、同伴者がいない限り1人で電車に乗ることが困難です。 2 夫の異常な行動 結婚直後から、妻が結婚前に付き合っていた男性との交際がまだ続いているのではないかと夫は妻を疑い、大声で怒鳴りつけたり、夜遅くなってから妻にその男性へ電話をさせて、相手をののしらせたりしました。 また、日常生活でも、夫は妻を長時間注意したり怒鳴ったりすることがありました。 そこで妻はこれに耐え切れず、夫との婚姻届後も数日から2週間程度の家出を何度も繰り返し、平成3年2月の披露宴の数日前にも家出をしました。 3 家出と帰宅の繰り返し… 妻が家出を繰り返す度に、夫は、妻に戻ってきて欲しいと優しい言葉を掛け、妻に対する態度を改めるように約束しました。そして、妻の帰宅後は妻に対して優しく接しました。 妻は、このような夫の優しい一面と、パニック発作の持病を持つ夫を助けたいという気持ちから、離婚を思いとどまり、家出の度に帰宅していました。 4 遂に別居へ 平成13年11月2日、夫と妻は近所の夫婦2組とカラオケに行きました。 その時、夫は一緒に行った女性の腕からしがみついて離れず、これに気付いた妻が何回注意しても夫はかえってわざと腕を離そうとしませんでした。 また、夫が会計をした際に、皆におつりを返さなければならないことを妻が夫に伝えていなかったため、一緒に行った2組の夫婦からおつりを返して欲しいと言われて気まずい思いをしたことなどに夫が腹を立てました。 そこで、夫が妻に対して激しく注意したところ、妻がこれを無視したため、夫は妻の足を蹴って激しく責め立てました。 帰宅した後も、夫は朝まで妻に対して「疫病神だ、出て行け。俺はここのうちにはもう住めないから、明日この家に火をつけて俺もここに火をつける。」などと朝の5時ころまで怒鳴ったり、暴言を吐くなどしました。 妻はこのような状況に耐え切れないと考えて、平成13年11月3日から約2年近く別居を続けました。 5 離婚を求める裁判へ… 妻は夫との離婚を求める裁判を起こしました。 妻は①夫との離婚請求と、②夫は慰謝料1,600万円を支払うべきと主張しました。 それに対して夫も①妻との離婚請求と、②妻は慰謝料500万円を支払うべきと主張しました。 |
判例要約 | 妻の主張に対する裁判所の判断 1 夫と妻を離婚する 誤解を招きやすい妻の自由奔放な行動が、夫の執拗な叱責や怒鳴り声を招き、それによって妻は少なくとも20回前後に渡って家出をしました。 妻が家出から戻ってきてもしばらくすると同じことが繰り返され、結婚後約11年にしてついに妻が耐え切れなくなって約2年の別居生活となりました。 妻が夫との離婚を求めているのに対して、夫も妻との離婚を求めていることも考えると、夫と妻との婚姻関係には継続し難い重大な理由があると認められます。 2 夫への慰謝料請求を認めない 妻は夫に対して、執拗な叱責や注意により婚姻関係が破綻したと主張して、離婚に伴う慰謝料100万円の支払いを求めています。 しかし、夫のこのような行動は、妻の自由奔放な言動や性格にあると同時に、妻の家出の主な原因は、執拗に妻を叱責して、注意をし続けるという夫の言動や性格にあり、夫婦間には性格の不一致もうかがわれます。 よって、夫の行動は、妻に対する関係で法に反する行為ということはできないため、妻の要求は認められません。 3 夫への財産分与請求を認めない 妻が3分の1、夫が3分の2の持分を有している自宅の評価額は、1,480万円~1,760万円程度ですが、住宅ローンと補修のための借り入れ費用の合計額は約2,060万円になり、自宅の価値よりも、ローンなどの合計金額の方が上回っています。 また、妻は夫と比べて健康で、美容師としての収入がありますが、夫はパニック発作の持病を抱えてローンなどの返済に追われています。 これらの事情を考えると、妻の財産分与請求を認めることはできません。 夫の主張に対する裁判所の判断 1 夫と妻を離婚する 上記妻の主張に対する裁判所の判断の通り、夫と妻の婚姻関係には継続しがたい重大な理由があります。よって離婚が認められます。 2 妻への慰謝料請求を認めない 夫は、妻の頻繁な家出による家庭放棄のためにパニック発作の持病を抱え、精神的苦痛を受けたと主張して、妻に慰謝料500万円の支払いを求めています。 しかし、上記妻の主張に対する裁判所の判断の通り、妻の行動も、夫に対する関係で法に反する行動ということはできないため、夫の要求は認められません。 |
原文 | 主 文 1 原告X1と被告Y1を離婚する。 2 原告X1のその余の本訴請求を棄却する。 3 被告Y1のその余の反訴請求を棄却する。 4 訴訟費用は本訴請求に関する費用は原告X1の負担とし,反訴請求に関する費用は被告Y1の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 本訴請求 (1)主文第1項と同旨 (2)被告Y1は,原告X1に対し,1600万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 反訴請求 (1)主文第1項と同旨 (2)原告X1は,被告Y1に対し,500万円を支払え。 第2 事案の概要 本件は,原告X1が夫である被告Y1に対し,被告Y1の執拗な叱責や暴言により婚姻関係が破綻したから婚姻を継続し難い重大な事由がある旨主張して,離婚のほか,慰謝料100万円と財産分与1500万円の合計1600万円及びその遅延損害金の支払を求めたところ,被告Y1が原告X1に対し,反訴として,婚姻関係破綻の原因は原告X1の頻繁な家出による家庭放棄にある旨主張して,離婚のほか,慰謝料500万円の支払を求めたという事案である。 その中心的争点は,(1)婚姻を継続し難い重大な事由又は悪意の遺棄の有無,(2)破綻の原因が被告Y1の執拗な叱責・注意にあるのか,又は原告X1の頻繁な家出による家庭放棄にあるのか,そして,それらの行為がそれぞれ不法行為に当たるのかどうか,(3)原告X1の財産分与請求の当否である。 1 (前提事実) (1)原告X1(昭和31年○月○○日生。47歳)と被告Y1(昭和27年○○月○○日生。50歳)は,平成2年6月29日に婚姻した夫婦であり(甲1),被告Y1が前妻との間にもうけた子であるA(婚姻当時小学校4年生)とともに3人で生活をしていた。 (2)原告X1と被告Y1は,平成13年11月3日に原告X1が家を出てから以降,約2年間近く,完全な別居状態にある。 2 (原告X1の主張) (1)被告Y1は,原告X1との婚姻直後から,原告X1が結婚前に交際していた男性との関係が未だに継続しているものと邪推し,大声で怒鳴りつけたり,夜遅くその男性宅に電話をして相手をののしれと強要するなどした。そのため,原告X1はたびたび家を飛び出したりしたが,その度に,被告Y1がもうしない旨約束することから,帰宅していた。 (2)被告Y1は,日常生活の些細なことで少しでも気に入らないと,原告X1を大声で怒鳴り,ののしり,そのような状態が1,2時間にわたって継続した。また,このように怒鳴りまくる状況は,原告X1に対してだけでなく,被告Y1の実子や実父母,隣近所の住人にも及ぶ。 (3)平成13年11月2日に,原告X1及び被告Y1の夫婦と近所の2組の夫婦でカラオケに行った際,被告Y1は些細なことに腹を立て,原告X1を叩いたり蹴ったりした。それを見かねて止めに入った近所の夫婦の夫に対し言いがかりを付け,殴りかかり,大声で怒鳴りつけただけでなく,さらに被告Y1宅にその方を呼びつけ,暴言を吐き,眼鏡ケースを投げつけて軽い怪我まで負わせた。その方が帰った後も,朝まで被告Y1は原告X1に対し暴言を吐き,怒鳴りまくり,その間原告X1は怯えてなにもできない状態であった。原告X1はこのような状況に耐えきれず,平成13年11月3日から家を出て,別居した。 (4)被告Y1は,原告X1が家を出た後も,原告X1の勤務先にまで電話を掛けてきて,原告X1を脅すだけでなく,電話に出た同僚に さらに詳しくみる:怯えてなにもできない状態であった。原告X・・・ |
関連キーワード | 家出,別居,暴言,パニック障害,婚姻関係,慰謝料,財産分与 |
原告側の請求内容 | 1 妻の請求 ①夫との離婚 ②慰謝料請求 ③財産分与請求 2 夫の請求 ①妻との離婚 ②慰謝料請求 |
勝訴・敗訴 | 1 一部勝訴 2 一部勝訴 |
予想裁判費用 (弁護士費用) |
400,000円~600,000円 |
証拠 | 1.住民票 ・浮気相手と同居していることを証明するもの 2.戸籍謄本・子供のDNA鑑定書 ・浮気相手との間に子供がいる場合は、それを証明するもの 3.写真、録音テープ、ビデオテープ ・例えばホテル・浮気相手の自宅への出入り写真など 4.探偵社等の調査報告書 ・相手の浮気を証明できるもの 5.クレジットカードの利用明細・領収書 ・飲食店・ホテルなどの利用記録など 6.パソコン・携帯電話のメール、手紙 ・浮気相手とのやり取りを証明できるもの |
審査日 | 第一審 東京地方裁判所判決/平成14年(タ)第656号、平成15年(タ)第386号 第二審 なし 第三審 なし |
上部の「妻の家出癖、夫の暴言癖で離婚…」に関連する離婚法律問題・離婚判例
事例要約 | この裁判を起こしたのは妻(原告)であり、裁判を起こされたのは夫の浮気相手の佐藤:仮名(被告)です。 1 結婚 妻と夫は昭和42年春同期のアナウンサーとしてB株式会社に入社し、昭和44年10月28日に結婚しました。妻は長男の太郎(仮名)を出産したのを機にB株式会社を退社して専業主婦になりました。 2 夫の不満… 夫は妻と結婚後、妻が自宅の掃除や家事を十分にしない等不満を抱いていました。 しかし、おおむね平穏な結婚生活を続けていました。 3 夫の浮気 佐藤は大学在学中の昭和63年8月、B株式会社の子会社に入社するための試験の際に始めて夫に会いました。 佐藤は昭和63年10月からB株式会社でアルバイトとして働き始めてその後夫と交際し、性交渉を持つようになりました。 佐藤は、家庭を持っている相手と交際していることを当時から自覚していました。 4 夫と佐藤との関係 平成2年以降、夫と佐藤との交際は深まり、少なくとも週に2・3回は会うようになりました。夫は佐藤に対して、妻と離婚する意思があることを告げていました。 5 佐藤がお見合いをする 平成8年2月ころ、佐藤は友人の紹介で2回お見合いをして結婚の申し込みを受けました。しかし、夫から結婚の意思を告げられ説得されたため、夫との交際を続けることにしました。 6 夫の浮気が妻に発覚 平成8年5月ころ、妻は友人から夫が他の女の人と交際していることを知らされました。 夫は妻に佐藤と交際していること告げました。 7 夫の単身赴任 夫は札幌に単身赴任することになったため、佐藤に対して札幌に引っ越すように求めました。佐藤は平成10年10月に退職して、11月に札幌に引っ越しました。そして、夫の住むマンションの別室に住むようになりました。夫は同じマンションに佐藤が住んでいることを妻に知らせませんでした。 夫は単身赴任後も妻に対して自分のスケジュール表を渡したり、3ヶ月に2回程度自宅に戻った時には妻と友人と会食をするなどしていました。妻も年に2回程度札幌を訪ねました。 8 夫と佐藤との関係が続いていることが妻に発覚 平成10年10月に妻が夫のマンションに来ていた時、佐藤の荷物の発送の問い合わせを受けて、夫に問い合わせましたが、夫は佐藤がパリにいて荷物の受取を頼まれていると説明しました。妻は疑問に思い弁護士に依頼して調査したところ、佐藤が夫と同じマンションに住んでいることを知りました。 9 夫が妻に対して離婚を求める 夫は平成11年10月6日に弁護士を通じて妻に離婚を求めました。妻は平成11年10月19日に弁護士を通して、佐藤に対して夫との同棲を中止して慰謝料1億円を支払うように求めました。 10 自宅を妻に明け渡す 平成12年1月13日に夫は佐藤と男女の関係になったことで、妻に迷惑をかけたことを謝りました。また、佐藤と縁を切って、妻に対する慰謝料として自宅の土地建物の夫の持分全部を妻に移すことなどを内容とする協定書にサインし、自宅を妻に明け渡す手続きをしました。 11 妻の自殺未遂 平成12年8月4日に妻は大量の睡眠薬を飲み自殺を図ったが、未遂に終わりました。 12 公正証書の作成 平成12年9月8日に夫・妻それぞれ弁護士を立て、協定書に基づいて公正証書を作成しました。公正証書とは、法律上完全な証拠力を持っていて、契約した内容を相手が行わなかったときには、その内容を強制的に行わせることもできる強い力を持った書類のことです。 その内容は下記の通りです。 ①夫は佐藤との縁をすみやかに切って、妻とその家族が平安を取り戻すような具体的な行動、最善の努力をすることを妻に約束した。 ②夫は妻に対して慰謝料として6,000万円の支払い義務があることを承認して妻に対して下記の通り支払うことを約束した。 ・3,000万円については、お金を支払う代わりに自宅の土地建物の夫の持分全部を妻のものとすること。 ・残りの3,000万円は平成16年7月11日か夫がB株式会社を退職するのとどちらか早い時期に支払うこと。 ③公正証書作成や土地建物を妻の所有物にするための手続きにかかる金額、税金は全額夫が負担する。 ④この契約を守らない時は強制的に執行を受ける。 14 夫と佐藤の関係継続中… 平成13年3月、夫は別のマンションの一室を購入して引越し、佐藤も夫の住む居室に引越しました。夫と佐藤はその後も同居を続けています。 15 妻は夫から3,000万円の支払を受ける 平成13年3月31日に夫はB株式会社を退社しました。 平成13年4月に妻は夫に対して公正証書に基づく3,000万円の支払いを求めました。 妻は平成14年6月27日までに夫より全額の弁済を受けました。 |
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判例要約 | 1夫の浮気相手佐藤への慰謝料請求は認められない 佐藤が妻に対して責任を負うことは明らかであると裁判所は認めています。 しかし、夫と佐藤のした行為に関しては、夫のした賠償によって妻の精神的損害が回復される点で密接な関係があると考えられます。夫が妻に対して不動産の持分全部を引渡し、3,000万円を支払ったことにより、十分に妻は慰謝料を受けていると考えられるというのが裁判所の判断です。 |